イギリス洗濯事情を徹底解説


イギリスで洗濯をすると、なんか服が臭い気がする、なんかごわつく、白いシャツがくすんできた——という経験をした人は少なくないと思います。

洗濯機が壊れているのか、洗剤が合わないのか、自分のやり方が悪いのか。最初はわからなくて地味にストレスでした。

原因は主に「水」です。イギリスの水は日本と根本的に違います。その違いを理解してから洗剤やその使い方を変えると、洗濯の効果が劇的に変わります。ぜひ最後まで読んでみてください。

まず知っておくべき大前提——イギリスの水は「硬水」

日本の水道水はほとんどの地域で「軟水」です。ミネラル分が少なく、洗剤が泡立ちやすく、すすぎも簡単。日本の洗濯機や洗濯用洗剤はこの軟水を前提に作られています。

イギリス(特にロンドンとイングランド南東部)の水道水は「超硬水」です。
(各地の水の硬度の確認はこちら
カルシウムやマグネシウムのミネラルが大量に含まれていて、洗剤の洗浄成分と反応してしまいます。ミネラルのカスが出て、泡立ちが悪くなり、洗浄力が落ちます。これが「なんか汚れが落ちた気がしない」の正体です。

硬水がもたらす具体的な問題はこれだけではありません。

  • 衣類がごわつく・チクチクする——ミネラルが繊維に残留して硬くなる。特にタオルや綿素材
  • 白い服がだんだんグレーになる——洗剤カスとミネラルが蓄積して白さが失われる
  • 洗濯機自体が傷む——ドラムや配管に石灰質の堆積物が溜まり、洗浄力が落ちて最終的には故障の原因になる
  • 洗剤の泡が残りやすい——すすぎが不十分になりやすく、肌荒れの原因にもなる

ロンドンの水の硬度は約300〜400mg/L(炭酸カルシウム換算)。日本の平均が50〜60mg/Lなので、単純計算で5〜8倍のミネラルが入っています。イングランド北部・スコットランドは比較的軟水で、エリアによって違いはありますが、南東部に住んでいる人はほぼ全員が硬水の影響を受けています。

イギリス洗剤の「Bio / Non-Bio」——これを知らないと選べない

イギリスのスーパーの洗剤コーナーに行くと、ほぼすべてに「バイオ / ノンバイオ」表記があります。最初はわからなくて適当に選んでいましたが、これが洗濯の成功を左右する最も重要な要素です。

Bio(バイオ)洗剤——とにかく汚れを落としたいなら

酵素(enzyme)が入っています。タンパク質・脂質・デンプンなどの汚れを分解する力が強く、食べ物の汚れ、皮脂汚れ、泥汚れに抜群の効果を発揮します。

ただ一方で、すすぎが不十分だと洗剤の残留成分(特に界面活性剤)が肌に残り、かゆみや赤みの原因になることがあると、イギリスの皮膚科医にも指摘されています。私自身もBio洗剤を使い始めたころにチクチクや赤みが出ましたが、すすぎを1回追加(Extra Rinse)したり、洗剤の量を減らすようにしてから、肌の違和感はかなり減りました。敏感肌の方は、試してみるのがおすすめです。

洗浄力が高い

  • 低温(30°C)でも酵素が機能するため、節電になる
  • ただし酵素が肌に残ると刺激になることがある(敏感肌・乳幼児の衣類には注意)
  • ウール・シルクなどのデリケート素材には使えない(酵素がタンパク質繊維を分解してしまう)
  • 色落ちや衣類が傷みやすい

代表的なブランド:Persil Bio、Ariel Original(Bioタイプ)、Daz

Non-Bio(ノンバイオ)洗剤——デリケートな素材・肌に

酵素を含まない洗剤です。洗浄力はBioより劣りますが、肌への刺激が少なく、敏感肌の人や赤ちゃんの衣類向けとして使われます。ウール・シルク・デリケートな素材にも使えます。

  • 肌が弱い・アトピーがある人に向いている
  • デリケート素材(ウール、シルク、レーヨン等)に使える
  • 洗浄力はBioより少し弱い
  • 高温(60°C以上)で洗うとある程度汚れは落ちる

代表的なブランド:Fairy Non-Bio、Persil Non-Bio、Surcare

日本の洗濯用洗剤は、硬水で使うと泡立ちが悪く、すすぎきれない洗剤カスが服に残って肌荒れや臭いの原因になることがあります。UKに来てからはUKの洗剤に切り替えるのが無難です。

衣類の種類別——洗剤と洗い方の選び方

① 普段着・綿素材・ひどめの汚れ

洗剤:Bio洗剤(液体またはジェルカプセル)
温度:40°C(普段着)/60°C(しっかり汚れを落としたいとき)
コース:Cotton(コットン)

仕事や外出で着た服、汗をかいた服、食べこぼしがある服はBioが正解です。Arielのオールインワンジェルカプセル(Pods/Liquitabs)は手間がなくておすすめという声が多い。ただし「洗剤の量を説明書より少し少なめにする」というのが硬水地域でのコツです。多すぎると泡が残りやすくなります。

② おしゃれ着・デリケート素材(シルク・レーヨン・ニット)

洗剤:Non-Bio洗剤、またはWoolite、Fairy Non-Bio
温度:30°C以下(冷水推奨)
コース:Delicates / Silk / Hand wash

ウールのニットやシルクブラウスにBio洗剤を使うと、酵素がタンパク質繊維を攻撃してしまい、洗うたびに縮んだり生地が傷んだりします。「なんかニットが1シーズンで使い物にならなくなった」という経験がある人は、Bio洗剤が原因の可能性大です。

Wooliteは日本では入手しにくいですが、UK・ヨーロッパのスーパーに普通に売っています。デリケート素材専用に作られていて、こちらのアウトドアコミュニティでも「ダウンジャケットの洗濯に使っている」という声が多いです。

③ 色物(鮮やかな色・プリント物)

洗剤:Colour専用洗剤(Persil Colour、Ariel Colour Protect)
温度:30°C
コース:Colours / Mixed

色物用洗剤には色素を保護する成分が入っています。また、色物はできるだけ裏返しにして洗うと、生地の表面が摩擦で傷みにくく、色落ちも抑えられます。新しい色物は最初の数回、単独で洗う(他の服との色移りを防ぐため)のも定番の注意点です。

④ 白い服・白いシャツ

洗剤:Bio洗剤 + 蛍光増白剤入りのもの(Ariel、Persil の白物用)
温度:40〜60°C
コース:Cotton(白物は色物と絶対に分けて洗う)

硬水地域で白い服を洗い続けると、ミネラルと洗剤カスが蓄積して徐々にグレーがかってきます。これを防ぐには白物専用または蛍光増白剤(optical brightener)入りの洗剤を使い、温度を少し上げて洗うのが効果的です。

すでに黄ばんでしまった白シャツには、Dr. BeckmannのLaundry Whitening(衣類用ホワイトニング剤)や、Vanish OxiAction(白物用)を洗剤と一緒に投入すると改善することがあります。ただし一度で劇的に白くはならないので、数回繰り返す前提で。

⑤ タオル・寝具

洗剤:Bio洗剤(柔軟剤は使わないか最小限に)
温度:60°C(衛生面で高温推奨)
コース:Cotton

タオルについては「柔軟剤を使いすぎると吸水性が落ちる」というのが洗濯界隈の定説です。柔軟剤はタオルの繊維をコーティングして、ふわふわ感は出るものの、水を吸わなくなってしまいます。タオルには柔軟剤を使わないか、ごく少量に抑えるのがおすすめです。

代わりに「乾燥機(tumble dryer)」または「乾燥機がない場合はよく振ってから干す」という方法でふんわり感を出すことができます。

Limescale Remover——イギリス洗濯の隠れた必需品

イギリス人でもこれを知らない人が意外と多いのですが、硬水地域では洗濯機の内部に「スケール(石灰質の堆積物)」が少しずつ溜まっていきます。ヒーターや配管にこびりついて、洗浄力が落ち、電気代が上がり、最終的に機械の寿命を縮めます。

これを防ぐのがLimescale Remover(石灰除去剤)です。

Calgon——イギリス最定番の石灰除去剤

UK・ヨーロッパで圧倒的なシェアを持つのがCalgonです。タブレット・粉末・液体の3種類があります。使い方はシンプルで、洗濯のたびに洗剤と一緒に投入するだけ。「毎回入れる必要があるのか」と疑問に思う人が多いですが、硬水地域では継続使用が推奨されています。

Redditのr/UKhomeownersやr/CleaningTipsでも「ロンドンに住んでいるならCalgonは必須」という意見が多くて、「使い始めてから洗濯物の仕上がりが変わった」という声をよく見かけます。

  • タブレットタイプ:1回1錠。手間がなく、計量ミスがない。一番使いやすい
  • 粉末タイプ:コスパが高い。1回あたりのコストが最も安い
  • 液体タイプ:溶けやすい。低温洗濯でも効果が出やすい

Calgon以外の選択肢

  • Oust All Purpose Descaler:洗濯機だけでなくケトルや浴室にも使える汎用タイプ
  • HG Descaler:ヨーロッパ発の業務用ライン。ガチで効く
  • クエン酸:スーパーやネットで安く買える。洗濯槽クリーニングに月1回使う人も多い

「Calgonって高くない?」と思う気持ちはわかります。でも、洗濯機の修理・買い替えのコストと比べると安いもの。持ち家でない場合でも、洗濯機の調子が悪くなると大家とのやりとりが面倒だったりするので、定期的に使う価値はあります。

洗濯物を傷めないための基本ケア

① 色物・プリント物は裏返して洗う

ドラム式洗濯機は衣類がドラム内でぐるぐる回転します。このとき、生地の表面は他の衣類や金属ドラムと摩擦します。裏返しにしておくだけで、プリントの色落ち・ひび割れ、生地表面の毛羽立ちが大幅に抑えられます。「1シーズン着たら色が薄くなってきた」という経験がある人は、試してみてください。

② チャック(ジッパー)は閉めてから洗う

開いたままのジッパーは、他の衣類に引っかかってダメージを与えます。特にニット・デリケートな生地は一発でほつれることがあります。ジャケット・パンツ・ポーチなど、ジッパーのついているものはすべて閉めてから洗濯機に入れてください。

③ デリケートな衣類はランドリーバッグ(洗濯ネット)に入れる

イギリス・ヨーロッパでも洗濯ネット(laundry bag / mesh bag)は普通に売っています。Poundland、Primark、Amazon.co.ukなどで入手できます。

  • 下着・ブラ:形崩れ防止・ワイヤーの突き出し防止
  • 靴下・小物:紛失防止(洗濯機の奥に入り込む)
  • ニット・シルク:摩擦ダメージ軽減
  • スポーツウェア(特にメッシュ系):繊維の引っかかり防止

日本から多めに持ってくるか、Primarkで1£ぐらいで売っているので現地調達でも問題ありません。

④ 洗濯機に詰め込みすぎない

イギリスの洗濯機はドラム式で、容量は通常7〜10kgです。「乾いた衣類の重さ」がこの数値で、濡れると2〜3倍に膨らみます。
詰め込みすぎると衣類が動けずに汚れが落ちにくく、機械への負担も増えます。
目安はドラムの7〜8割程度。洗濯槽の上の部分がまだ少し見えるぐらいに留めておくのが良いです。

⑤ 洗濯が終わったらすぐドアを開ける

これはイギリスの洗濯機あるあるで、ドアのゴムパッキン(シール)にカビが生えやすいです。洗濯後にすぐドアを開けておくと湿気が飛び、カビの発生を防げます。洗剤の引き出しも定期的に引き出して洗ってください。黒い汚れが溜まっていたらカビです。

イギリスの一般的な洗濯機の設定

ドラム式洗濯機の操作パネルを見ると見慣れないコースばかりで最初は戸惑います。よく使うコースと設定を整理してみました。

コース名 用途 おすすめ温度 目安時間
Cotton(コットン) 普段着・綿素材・タオル・寝具 40〜60°C 2時間〜4時間20分(Eco-Cottonは3時間超が一般的)
Synthetics / Polyester 化繊素材・スポーツウェア 30〜40°C 1時間30分〜3時間30分(半分量が基準のことが多い)
Delicates / Silk シルク・レース・デリケートな素材 30°C以下 30分〜1時間
Wool / Hand wash ウール・ニット 30°C以下 40分〜1時間
Quick wash(15〜30分) 軽い汚れのみ・急いでいるとき 30〜40°C 15分〜1時間(機種により再計算で延長されることあり)
Colours 色物専用コース 30〜40°C 1時間〜2時間30分

日本の洗濯機と比べて、とにかく時間がかかります。。。Cottonコースで2時間かかるのがデフォルトで、まだやってるの?と毎回思います。これは普通です。イギリスの洗濯機は水道水の水圧が低めで、加熱も電気で行うため時間がかかります。私は、あまり汚れてないものはQuick washにしたり、前日夜に予約してます。

まとめ——UKでの洗濯、最低限これだけ押さえておく

ポイント 対策
硬水で洗剤が効きにくい Bio洗剤を使う、Calgonを毎回入れる
洗剤の使い分け 普段着→Bio
デリケート・敏感肌→Non-Bio
色物→Colour専用
白い服がくすむ 白物専用洗剤+60°C
Vanish OxiAction(白物用)を追加
タオルごわごわ 柔軟剤をやめるか最小限に
60°C洗い+よく振って干す
洗濯機内部の
劣化・汚れ
Calgon(毎回)+クエン酸または専用クリーナー(月1)
衣類の傷み 色物・プリント→裏返す
ジッパー→閉める
デリケート→ネットに入れる
洗濯機のカビ 洗濯後すぐドアを開けて乾燥させる

硬水と洗剤の相性さえ理解してしまえば、あとは日本での洗濯とそれほど変わりません。最初に「Bio vs Non-Bio」「Calgon」「裏返し」の3つを覚えておくだけで、洗濯の失敗がぐっと減ります。

「服が傷む、くすむ、臭い」でお困りの方は、まず洗剤をイギリスのBioに変えてCalgonを使う——ここから試してみてください。

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