「イギリスに来たばかりだと、クレジットカードの審査に通らない」という話を聞いて、不安になった人も多いはずです。実はこれには理由があります。日本での実績はイギリスでは一切引き継がれず、イギリスに来た時点で「この人が信用できるかどうかのデータが何もない」状態からのスタートになるからです。この記事では、その仕組みと、審査を通しやすくするための具体的な選択肢を、できるだけかみ砕いて説明します。
1. なぜイギリスでクレジットカードが作りにくいのか
イギリスでは、「クレジットスコア」という、その人がどれだけ約束通りにお金を返してきたかを数値化した”信用の成績表”があり、カード会社はこの成績表を見て審査します。イギリスに来たばかりの人は、この成績表そのものがイギリス国内に存在しません。日本でどれだけ良いカードの使い方をしていても、そのデータはイギリスには引き継がれないのです。つまり、成績が悪いわけではなく、成績表自体が「まだ空欄」の状態なのです。
この「空欄の状態」を、なるべく早く”良い成績”で埋めていく必要があります。そのための代表的な方法を、次の章から順番に紹介します。
2. 選択肢①:銀行に口座を作り、その銀行のカードから始める
HSBC・Barclays・Lloyds・NatWestといった大手銀行は、自社の普通預金口座を一定期間きちんと使っている人に対して、比較的審査を通しやすい傾向があります。銀行側からすると、「この人がすでにうちの口座でどんなお金の動かし方をしているか」というデータをすでに持っているため、ゼロから審査するより判断しやすいからです。
まずは口座を開設し、給与の受け取りや家賃の支払いなど、日常のお金のやり取りをその口座で行う実績を作ってから、同じ銀行のクレジットカードに申し込む、という順番がおすすめです。
大手銀行の口座開設に時間がかかる・審査で足踏みしている、という場合は、Wiseの口座を先に作って当面のお金のやり取りをそちらで済ませておく、という選択肢もあります。
3. 選択肢②:British Airways Amex・Nectar Amexのような”人気カード”
在英日本人のブログでは、「最初の1枚はBritish Airways AmexかNectar Amex(いずれもAmerican Express発行)がいい」という助言をよく見かけます。マイルやポイントの還元率が良く、特典も充実しているため、”当たれば嬉しいカード”であるのは事実です。
ただし、これらは審査基準が完全には公開されておらず、同じような条件の人でも、審査に通る人と通らない人がいます。複数回落ちてから通ったという体験談も少なくありません。「まず試してみる価値はあるが、これ1本に頼らない」という位置づけで考えるのが現実的です。
4. 選択肢③:審査のハードルが低い「クレジット構築専用カード」
ここが、日本語で書かれた記事ではあまり紹介されていない、この記事で一番伝えたい選択肢です。イギリスには、最初から「信用の成績表が空欄の人」を対象にした、”成績表を作るための専用カード”が存在します。Aqua・Capital One Classic・Vanquis・Barclaycard Forward・Tesco Foundationといったカードがこれにあたります。
仕組みをかみ砕くと
これらのカードは、最初に使える金額(利用限度額)が£200〜£1,500程度と低く設定されています。「いきなり大金を貸すのはリスクが高いから、まずは少額から信用してもらう」という考え方です。その代わり、審査の基準は人気カード(British Airways Amex等)より低く、成績表が空欄の状態でも審査に通りやすいという特徴があります。
利息の割合(APR)は年29%〜40%程度と、他のカードに比べてかなり高めに設定されています。ここだけ聞くと「損では?」と思うかもしれませんが、利息は「使った分を期日までに返さなかったときにだけ発生する追加料金」です。毎月使った分をその都度全額返済していれば、利息そのものは発生しません。つまり、このカードは「高い利息を払うためのカード」ではなく、「毎月きちんと全額返す練習をしながら、信用の成績表を作るためのカード」だと理解しておくと安心です。
具体的な使い方の目安
- 毎月、少額(公共料金の支払いなど)だけをこのカードで払う
- 支払い期日が来る前に、使った分を全額返済する(リボ払いのように一部だけ返すことはしない)
- これを6〜12ヶ月続けると、成績表に「約束通り返済している人」という実績がたまっていく
- 実績がたまってきたら、より条件の良いカード(利息の低いカードや、人気の高いカード)に申し込みを進める
5. 【要検証】海外のカード実績を持ち込める「Amex Global Transfer」という制度
Amex(American Express)には、母国で使っていたAmexカードの実績を、移住先の国のAmex審査に活かせる「Amex Global Transfer(グローバルトランスファー)」という制度があります。Amex公式サイトを確認したところ、日本・イギリスはどちらも、この制度に参加している国として個別のページが用意されており、条件は「Amex発行の既存カードを、本会員として3ヶ月以上保有し、口座が良好な状態であること」と案内されています。
ただし、「日本からイギリスへ」という組み合わせが明示的に対象と書かれた公式資料までは見つけられませんでした。国ごとに個別ページが用意されている仕組み上、条件を満たせば使える可能性は高いと見ていますが、100%の確証ではありません。日本でAmexカードを3ヶ月以上使っている実績がある場合は、出発前にAmexジャパンのカスタマーサービスへ直接問い合わせて、UK版への移行が可能かを確認してから手続きを進めることをおすすめします。
似た名前の「Nova Credit」という別の制度もありますが、こちらは対応国に日本が含まれていないため、日本からイギリスへ来る人は対象外です。2つの制度を混同しないよう注意してください。もし日本でAmexカードを長く使っている実績がある場合は、出発前にAmexジャパンへ直接、Global Transferの利用条件を問い合わせておくと確実です。
6. まとめ:どう組み合わせるべきか
- イギリスに着いたばかりのころ:まず銀行口座を開設し、給与受け取り等の実績を作り始める
- 並行して:British Airways Amex等の人気カードに一度申し込んでみる(通れば儲けもの、落ちても問題ない)
- 人気カードに落ちた場合:Aqua・Capital One Classic等のクレジット構築専用カードに切り替え、毎月全額返済を6〜12ヶ月継続する
- 日本でAmexを長く使っていた場合:出発前にAmex Global Transferが使えるか、日本のAmexに直接確認しておく
どのカードも、審査に通ること自体がゴールではありません。毎月の支払いを期日通りに続けることが、次の(より条件の良い)カードやローンの審査を通しやすくする一番の近道です。
※クレジットカードの審査基準・APR・対象カードは変更されることがあるため、申し込み前に必ず各社公式サイトで最新情報を確認してください。

