イギリスで初めてリサイクル用のビンを開けたとき、多くの日本人が同じところで戸惑います。「え、紙もプラスチックも缶も、全部このビンに一緒に入れていいの?」というポイントです。日本で長年しみついた「分別は細かくするもの」という感覚のまま出すと、逆に混乱してしまいます。
イギリスの資源ゴミは、日本とは分別の考え方そのものが違います。ここでは、イギリス 資源ゴミのルールを日本との違いを軸に整理しながら、出したゴミがその後どうリサイクルされていくのかまで見ていきます。
1. 日本との一番大きな違い:イギリスは家庭での分別が少ない
日本の分別は、ここまで細かい
日本の資源ゴミは、自治体によって多少の差はあっても、かなり細かく分けるのが一般的です。ペットボトルは中を洗ってラベルとキャップを外し、それぞれ別の日に出します。缶や瓶も中身を洗い、瓶は色ごとに分けることもあります。プラスチック製の容器包装と、それ以外のプラ製品を分ける自治体も多いです。紙類も新聞・雑誌・段ボールを別々に紐で縛って出すのが一般的なルールです。
つまり日本では、「洗う」「外す」「分ける」「縛る」という手間を、資源ゴミごとにひとつずつかけていくのが当たり前になっています。
イギリスは「まとめる」自治体と「軽く分ける」自治体が半々
ところがイギリスでは、日本ほど細かく分けません。ただし、「全部を1つのビンにまとめる」と言い切ってしまうのも、実は正確ではありません。イギリス全土の自治体を調べた調査によると、収集方法は大きく3パターンに分かれています。
| 方式 | 内容 | 採用している自治体の割合 |
|---|---|---|
| コミングル方式 (Co-mingled) |
紙・プラ・缶・ガラスをすべて1つのビンにまとめる | 約46% |
| 2ストリーム方式 (Two-stream) |
2つのグループに分ける(例:紙・プラが1つ、瓶・缶・ペットボトルがもう1つ) | 約38% |
| マルチストリーム方式 (Multi-stream) |
3つ以上のビン・箱に分ける(日本の感覚に近い) | 約16% |
つまり、完全に1つにまとめる「コミングル方式」は半分に届きません。約4割の自治体は、ゆるく2つに分ける「2ストリーム方式」を採用しています。例えば、紙・プラのグループと、瓶・缶・ペットボトルのグループに分ける形です。「うちは紙とプラだけ分かれていて、瓶・缶・ペットボトルは一緒だった」という場合も、決して珍しいケースではありません。コミングル方式とほぼ同じくらい、よくあるパターンです。
面白いことに、分け方が細かい自治体ほど、実際のリサイクル率も高い傾向があります。マルチストリーム方式の自治体は平均53%、2ストリーム方式は平均43%、コミングル方式は平均41%というデータもあります。理由は次の章で説明しますが、分ける手間を家庭にかけるほど、施設での取りこぼしが減る、というイメージです。
2. なぜ「ガラスだけ別」というパターンが多いのか
2ストリーム方式で特によく見られるのが、「紙・プラは一緒、ガラスは別」という組み合わせです。政府のガイダンスでも、ガラスびん・ジャーだけは他の資源ゴミ(紙・プラ・缶)とは別に回収してよいことになっています。ガラスは輸送中に割れやすいというのが理由です。割れると紙やプラスチックに細かい破片が刺さり、それらをリサイクル不可にしてしまうことがあります。
そのため、出会うパターンは2種類あります。「紙・プラ・缶は一緒のビン、ガラスだけ別のボックス」という組み合わせと、「紙・プラが1つ、瓶・缶・ペットボトルがもう1つ」という組み合わせです。これも自治体ごとに違うので、引っ越したら最初にCouncilの公式サイトで確認しておくのが確実です。
3. イギリス 資源ゴミ、全国共通になった「集める品目」
実はこれまで、イギリスでは「何を資源ゴミとして集めるか」自体も自治体によってバラバラでした。ある町ではプラスチックの容器を回収していても、隣町では回収していない、ということも普通にありました。
これを解消するために始まったのが、「Simpler Recycling」という国の政策です。2026年3月末までに、イングランドの全自治体で、少なくとも次の品目を資源ゴミとして回収することが義務化されました。
- 紙・段ボール(Paper and cardboard)
- プラスチック容器(Plastic containers)
- ガラスびん・ジャー(Glass bottles and jars)
- 金属の缶(Metal tins and cans)
つまり、「何が資源ゴミとして回収されるか」という品目は、これで全国どこでも同じになったということです。ただし、それを「1つのビンにまとめるか、分けるか」という集め方(方法)までは統一されていません。だからこそ、色分けや分け方は今でも自治体ごとに違う、というわけです。
4. 出した資源ゴミは、その後どうなる?
「紙もプラも缶も一緒に出す」と聞くと、本当にちゃんとリサイクルされているのか心配になると思います。ここでは、収集車が持っていった資源ゴミが、その後どうなっていくのかを順番に見ていきましょう。
MRF(マテリアル・リカバリー・ファシリティ)に運ばれる
収集された資源ゴミは、MRF(Materials Recovery Facility、マテリアル・リカバリー・ファシリティ)と呼ばれる専用の選別施設に運ばれます。イギリス国内には100か所以上のMRFがあり、年間420万トン以上の資源ゴミを処理しています。まずここで重さを計り、汚れがひどすぎる荷物はこの時点で「リサイクル不可」として弾かれてしまいます。
機械と磁石で、素材ごとに自動で分けられる
MRFに入った資源ゴミは、まずベルトコンベアに乗せられます。ここから、人の手ではなく機械が素材ごとに自動で分けていきます。
- 紙・段ボール:回転する円盤(ディスクスクリーン)にかけると、平たい紙類だけが上に浮き上がって分離されます。
- 金属の缶:強力な磁石で鉄製の缶を吸い上げます。アルミ缶は磁石にくっつかないので、「渦電流(エディカレント)」という特殊な仕組みで弾き飛ばして分けます。
- プラスチック:光学式のセンサー(オプティカルソーター)が、一瞬で素材の種類を見分けて、エアジェットで種類ごとに吹き分けます。
- ガラス:別回収の場合は専用の処理ラインへ。混ざって届いた場合も、機械のふるいで他の素材と分離されます。
つまり、日本で人間が手作業でやっている「分ける」という工程の一部を、イギリスでは機械と磁石とセンサーが肩代わりしています。コミングル方式の自治体では、これがあるからこそ「まとめて出すだけ」で済みます。2ストリーム・マルチストリーム方式の自治体でも、家庭でかける分別の手間は日本よりずっと少なく済みます。その分を、このMRFの工程が補っているのです。
素材ごとに固めて(梱包して)、業者に売られる
素材ごとに分けられたゴミは、それぞれプレス機で四角いブロック状に固められます。これを「ベール(bale)」と呼びます。このベールが、紙・プラスチック・アルミ・鉄それぞれの再生工場(リプロセッサー)に売られていき、新しい製品の原料として生まれ変わります。
ここまでの流れを見ると分かる通り、イギリスの資源ゴミは「家庭での分別を最小限にする代わりに、施設でしっかり分ける」という役割分担になっています。日本の「家庭で細かく分けて、施設の負担を減らす」方式とは逆方向の考え方です。ただし、1章で見た通り、自治体によって家庭側にかかる分別の手間には差があります。より正確に言えば、「家庭でどこまで分けるか」の目盛りが、日本ほど細かい方に振れていない、ということです。

5. 日本の感覚とズレやすいポイント
洗う必要はある?
日本ほど神経質になる必要はありませんが、洗うこと自体は必要です。中身が残ったままの容器を出すと、他のきれいな資源ゴミまで「汚染物(contamination)」として一緒に扱われてしまいます。その結果、荷物ごとリサイクルされずに捨てられてしまうことがあります。ヨーグルトカップや缶詰の容器は、軽くすすいでから出すようにしましょう。完璧に洗剤で洗う必要はなく、「中身が目立って残っていない」程度で十分です。
ラベルやキャップは外さなくていい?
日本ではペットボトルのラベルとキャップを外すのが一般的ですが、イギリスでは外さなくてよい自治体がほとんどです。先ほど説明したMRFの選別機械が、ラベルやキャップが付いたままでも自動で処理できるように設計されているからです。むしろキャップは付けたまま出すよう案内している自治体もあります。とはいえこれも自治体差があるので、心配な場合はCouncilのウェブサイトで確認してください。
レジ袋やお菓子の袋(ソフトプラスチック)は要注意
ここが日本人にとって一番の落とし穴かもしれません。レジ袋やお菓子の袋、ラップのような薄いプラスチックは、英語で「Soft Plastic」や「Plastic Film」と呼ばれます。これらは多くの自治体で、家庭のリサイクルビンに入れられません。MRFの機械にこの薄いフィルムが絡まってしまい、故障の原因になるためです。
その代わり、Tescoのような大手スーパーの店頭には、ソフトプラスチック専用の回収ボックスが設置されています。パンの袋やお菓子の袋、フルーツ用のネット袋などをまとめて持ち込むと、専門業者が洗浄・選別したうえでリサイクルしてくれます。「薄くてクシャクシャになるプラスチックは、家のビンではなくスーパーへ」と覚えておくと迷いません。
油や食べ物がついた紙・段ボール
ピザの箱など、油染みがついた紙製品もMRFの機械では紙として正しく処理できません。そのため、リサイクル不可で一般ゴミ行きになる自治体が多いです。日常のゴミ出し全体のルールについては、イギリスのゴミ出しガイドにまとめているので、あわせて参考にしてください。
まとめ:イギリスは「分けない」のではなく「分け方が違う」
- イギリスの分け方は自治体で3パターン。コミングル方式(約46%)と2ストリーム方式(約38%)がほぼ半々で、マルチストリーム方式(約16%)も存在する
- Simpler Recyclingにより、集める品目は全国共通になった(集め方は自治体ごとに違う)
- 出した資源ゴミはMRFという施設で機械が自動的に素材ごとに分けている
- ラベル・キャップは外さなくてよい自治体が多いが、汚れはある程度洗い流す必要がある
- レジ袋やお菓子の袋はスーパーの回収ボックスへ(家庭のビンには入れない)
イギリスの資源ゴミは、日本のように「家庭で細かく分ける」文化ではありません。自治体によって「どこまで分けるか」の程度は違いますが、どのパターンでも日本ほど厳密なラベル剥がしや紐縛りは求められません。その分を、施設の機械が補っています。最初は「これで本当に大丈夫なの?」と不安になるかもしれません。しかし、自分のCouncilの分け方さえ確認しておけば、洗うこととソフトプラスチックの扱いに気をつけるだけで、実はそれほど難しいルールではありません。

