イギリスで引っ越しが決まったときや、日本に本帰国することになったとき、必ずと言っていいほど頭を悩ませるものがあります。大きな家具や壊れた家電の処分です。ソファや冷蔵庫は日本に持って帰れません。そのため、どこかのタイミングで手放す必要が出てきます。
この「粗大ごみの処分」は、日本の「粗大ごみ」とはかなり違う制度です。日本の感覚のまま動くと、損をすることになりかねません。ここでは、イギリスの粗大ごみの出し方を、日本との違いから順番に説明します。
結論から言うと、イギリスの粗大ごみは「住んでいる場所(自治体)によって、金額もルールもまったく違う」制度です。それでいて、「探せば無料で処分できる方法もある」制度でもあります。この記事を読めば、ひと通り分かるようになっています。有料の回収サービスの使い方、無料で処分する3つの方法、そしてソファだけに存在する特別ルールまでです。
1. 日本とイギリスの一番大きな違い:粗大ごみは「予約制」で「金額は住所しだい」
日本の粗大ごみは、住む市区町村によって多少の差はあっても、仕組み自体はだいたい全国共通です。コンビニで「粗大ごみ処理券」というシールを買い、市に電話かネットで収集日を予約します。その券を貼って指定の場所に出す、という流れです。金額もだいたい500円〜数千円の範囲に収まります。
ところがイギリスでは、粗大ごみの収集はCouncil(自治体)ごとにバラバラです。料金も、安いところでは1回5ポンド程度なのに対し、高いところでは90ポンドを超えることもあります。同じ「ソファを1つ捨てる」だけなのに、住む場所によって10倍以上の差が出ることも珍しくありません。これは英語で「postcode lottery(郵便番号のくじ引き)」と呼ばれるくらい、イギリスでは有名な現象です。
つまり、「イギリスの粗大ごみはいくらですか?」という質問には、実は正しい答えがありません。まず自分の住んでいるCouncilのウェブサイト(GOV.UKの検索ページ)を確認するところから始める必要があります。次の章で、具体的にどうやって出すのかを見ていきましょう。
2. イギリス 粗大ごみの出し方:4つの選択肢
イギリスで粗大ごみを処分する方法は、大きく分けて4つあります。全部お金がかかるわけではないので、まずは全体像を知っておくと損をしません。
方法1:Councilの有料回収サービス(一番よく使われる方法)
自治体のウェブサイトから、捨てたい物を選んでオンラインで予約します。その場でカード払いをする流れです。数日後〜数週間後に指定された日の朝、家の前にその品物を出しておくと、専門のトラックが回収してくれる仕組みです。次の章で、この予約の流れをもう少し詳しく説明します。
方法2:HWRC(通称「tip」)に自分で持ち込む(無料)
HWRC(Household Waste Recycling Centre)は、日本で言う「ゴミ処理場」のような施設です。イギリスでは通称「tip(ティップ)」と呼ばれています。車を持っている人であれば、多くの品物を無料で持ち込んで捨てることができます。デメリットは、自分で車に積んで運ばなければならないことだけです。車がある人や、友人・家族に車を借りられる人にとっては、一番お金のかからない方法です。
方法3:チャリティ団体に無料で引き取ってもらう
まだ使える状態の家具や家電であれば、British Heart Foundationのようなチャリティ(慈善)団体が無料で自宅まで引き取りに来てくれます。イギリスでは「まだ使えるものを捨てずに寄付する」という文化が根付いています。こうしたチャリティの家具引き取りサービスがとても一般的です。ただし、壊れているものや汚れがひどいものは断られることがあります。「まだ人に使ってもらえるかどうか」が判断基準になります。
方法4:新しい家電を買うときに、古いものを下取りしてもらう
これは家電だけに使える方法です。イギリスの法律では、家電を売るお店(小売店)に義務があります。お客さんが新しい家電を買うとき、同じ種類の古い家電を無料で引き取らなければならない、という義務です。これをWEEE(Waste Electrical and Electronic Equipment)の「一対一」引き取りと呼びます。たとえば新しい冷蔵庫を買うなら、古い冷蔵庫を無料で引き取ってもらえる、というイメージです。新しい家電を買う予定があるなら、まずお店に「古いものを引き取ってもらえますか」と聞いてみる価値があります。
この4つのうち、どれが一番お得かは、捨てたい物の種類と、自分が車を持っているかどうかで変わってきます。まだ使えるならチャリティ、車があるならHWRC、家電を買い替えるなら下取り、それ以外はCouncilの有料回収、という順番で検討するのがおすすめです。
品目別の料金の目安
イギリスの粗大ごみの料金はCouncilによってバラバラです。全国共通の価格表というものは存在しません。とはいえ、「だいたいどれくらいかかるのか」の感覚がないと予算も立てにくいと思います。そこで、実際の自治体の料金例をもとにした目安を表にまとめました。
| 品目 | Council回収の料金目安(1点あたり) | 備考 |
|---|---|---|
| ソファ・アームチェア | £15〜£40 | Upholstered家具として別カテゴリーで申込が必要(3章参照) |
| マットレス | £15〜£35 | ソファ同様、Upholstered家具扱いになることが多い |
| 冷蔵庫・冷凍庫 | £20〜£35 | White Goods。冷媒ガスの処理があるため他より高めの傾向 |
| 洗濯機 | £15〜£30 | White Goods。買い替え時は下取り(方法4)も検討 |
| 衣装ダンス・本棚などの大型家具 | £15〜£30 | サイズによって追加料金がかかることがある |
| テレビ・モニター | £10〜£20 | WEEE対象品目。買い替え時の下取りが使えることが多い |
実際の自治体の料金例
実際の自治体の料金例をいくつか挙げます。South Kesteven District Councilでは最初の1点が£21、2点目以降は1点£11です(冷蔵庫・冷凍庫は特別料金で1点£21)。Durham County Councilでは小型品目6点までまとめて£24(追加1点ごとに£3)です。Royal Borough of Greenwichでは品目にかかわらず1点あたり定額£13.82です。このように、料金体系そのものがCouncilごとに違います。上の表はあくまで「だいたいこのくらい」という目安として使い、正確な金額は必ず自分のCouncilのウェブサイトで確認してください。
また、多くのCouncilでは複数の品目をまとめて申し込むと1点あたりの料金が下がります。引っ越しや帰国のタイミングでソファも冷蔵庫も洗濯機も一気に処分したい、という場合は、バラバラに予約するより1回にまとめたほうがお得になることが多いです。
3. イギリス 粗大ごみのソファ特別ルール:なぜ他と離して出す必要があるのか
ソファや布張りの椅子、クッション、ベッドのマットレスなど、布や綿が入った家具(英語で「Upholstered(アップホルスタード)家具」と呼ばれます)には、実は2023年から特別なルールがあります。これらは、他の粗大ごみとくっつけて出してはいけないのです。なぜそんな面倒なルールがあるのか、順を追って説明します。
なぜ焼却処分が必要なのか
昔のソファやクッションの中には、燃えにくくするための化学薬品(難燃剤)が使われていました。火事を防ぐための工夫でした。しかし実は、この化学薬品の中に問題のある成分が含まれていることが分かってきました。自然に分解されにくく、人や環境に悪い影響を与える可能性がある成分です(POPs=残留性有機汚染物質と呼ばれるもの)。
そのため、こうした化学薬品がしみ込んだソファは、普通の家具のように扱えなくなりました。リサイクルしたり、そのまま埋め立てたりすることができないのです。高温で焼却して、化学薬品ごと分解してしまうという、専用の処理が必要になりました。他の家具と混ざったまま集められると、どれが焼却が必要なソファなのか区別がつかなくなってしまいます。だからこそ、ソファ類だけは他の粗大ごみと離して、単独で出すことが法律で決められているのです。
つまり、「なぜソファだけ特別扱いなのか」の答えは、見た目の大きさの問題ではありません。中に入っている化学薬品の問題だった、というわけです。Councilに予約するときも、ソファやアームチェアは「Upholstered furniture」という別カテゴリーで申し込む必要があります。覚えておくと予約がスムーズです。
4. 冷蔵庫・洗濯機などの「白物家電」の出し方
冷蔵庫や冷凍庫、洗濯機、エアコンなどは英語で「White Goods(ホワイトグッズ)」と呼ばれます。これらも粗大ごみとして出せますが、ひとつだけ注意点があります。冷蔵庫や冷凍庫の中には、冷やすための「冷媒ガス」という気体が入っています。これが外に漏れると環境に悪い影響を与えます。そのため、White Goodsは普通の家具よりも慎重に扱う必要があります。Councilによっては追加料金がかかったり、専門の業者が回収したりすることがあります。
先ほど紹介した「方法4:新しい家電を買うときの下取り」は、実はこのWhite Goodsで一番よく使われる方法です。冷蔵庫や洗濯機を買い替えるタイミングであれば、お店にそのまま古いものを引き取ってもらうのが、手間もお金も一番かからない方法と言えます。
5. Councilの有料回収を予約する流れ
ここでは、実際にCouncilの有料回収サービスを予約するときの、一般的な流れを紹介します。細かい部分はCouncilによって違いますが、基本的な流れはだいたいどこも同じです。
- ステップ1:Councilのウェブサイトで予約する
自分の住所(郵便番号)を入力し、捨てたい品物を一覧から選びます。ソファなどのUpholstered家具は、別カテゴリーとして選ぶ必要があることが多いです。 - ステップ2:その場で料金を支払う
品物の数や種類に応じて料金が計算され、クレジットカードやデビットカードでその場で支払います。日本のようにコンビニで券を買う必要はありません。 - ステップ3:指定された収集日の朝、決められた時間までに外に出す
多くのCouncilでは、朝6時〜7時までに、家の敷地の境界(歩道際など)に品物を出しておくルールになっています。前日の夜に出すと、無許可の業者に持ち去られてしまうことがあるため、当日の朝に出すよう指示されるのが一般的です。 - ステップ4:回収を待つ
収集車は、その日の午前中から夕方(18時頃まで)のどこかのタイミングで回収に来ます。時間はきっちり指定されないことが多いので、当日は品物を家の中に出しっぱなしにせず、外に出しておく必要があります。
予約時の注意点
ここで重要な注意点があります。Councilのスタッフは、家の中や階段の上から品物を運び出してはくれません。予約した品物は、自分であらかじめ外の指定された場所まで運んでおく必要があります。大きな家具を一人で運ぶのが難しい場合は、事前に友人や業者に手伝ってもらう手配をしておきましょう。
また、予約していない品物を一緒に置いておいても、回収してもらえません。「ついでにこれも」は通用しないので、捨てたいものが複数ある場合は、最初の予約時にまとめて申し込んでおくのが確実です。
6. イギリス 粗大ごみで損しないための3つのコツ
最後に、イギリスで粗大ごみを処分するときに、少しでもお金と手間を節約するためのコツを3つ紹介します。
- まず無料の方法から検討する:いきなりCouncilに予約する前に、「これはまだ使えるかもしれない」と思ったら、チャリティへの寄付を検討してみましょう。処分費用がゼロになるうえ、誰かの役に立ちます。
- 複数の品物はまとめて予約する:多くのCouncilでは、1回の予約で複数の品物をまとめて出すと、1個あたりの料金が安くなります。引っ越しなどでまとめて処分するものがある場合は特に有効です。
- 引っ越しシーズンは早めに予約する:9月(新学期)や夏の終わりなど、引っ越しが集中する時期は、Councilの予約枠がすぐに埋まってしまうことがあります。処分したいものが決まったら、なるべく早めに予約サイトを確認しておくと安心です。
イギリスの粗大ごみは、日本のように「どこでも同じルール」というわけにはいきません。最初は少し面倒に感じるかもしれません。しかし、自分のCouncilのルールと、無料で処分できる方法さえ知っておけば、決して難しい手続きではありません。日常のゴミ出しについては、イギリスのゴミ出しガイドや生ゴミとキャディの使い方の記事もあわせて参考にしてみてください。

